組織内会計士の活躍事例


大杉 泉/株式会社イグニス 取締役監査等委員長

 

―― 会計士を目指した経緯をおしえてください

大杉氏:高校が商業高校だったのですが、簿記の成績がなぜか良く、きっと向いているのだろうと勘違いしたことがそもそものきっかけです。また私の学生時代は就職氷河期で、先輩たちが何十社も不採用になっている事実を目の当たりにし、何か学校の勉強以外の強みを持ちたいと思い、会計に関する資格を取ろうと思いました。高校卒業後から会計の勉強に集中したいと思い、大学ではなく簿記専門学校に進学しました。当初は税理士を目指していたのですが、途中で方針転換をし、都合5年弱掛けて会計士に合格しました。

大杉 泉 氏

 

―― 監査法人ではどのような業務に従事されていましたか
大杉氏:監査法人には6年間在籍しました。主な担当クライアントは鉄道会社とIT企業でした。大手監査法人の地方事務所に入所したため、比較的中小規模のクライアントが多く、早くから監査業務の全体を見ることができました。また業種も多様で、特殊なところでは社会福祉法人監査や地方自治体のアドバイザリー等にも従事しました。

 

――監査法人から組織内会計士になった理由をおしえてください
大杉氏:監査法人在職中に「監査役にならないか」と直接オファーをいただき、滅多にないチャンスだと思いましたので、思い切って転職することにしました。また過労による体調不良や妊娠、出産というライフイベントを経て、今後もずっと監査法人でキャリアを重ねていくというイメージが持てなくなってしまったことも理由の一つではありました。

 

――組織内会計士としての略歴をおしえてください
大杉氏:監査法人退職後、2014年12月にマザーズ上場のITベンチャー企業へ常勤監査役として選任され、2015年12月に取締役監査等委員に選任(監査等委員会設置会社への移行)があり現在に至ります(以下監査等委員も含め監査役と呼称します)。

 

    ――現在の仕事内容についておしえてください
    大杉氏:日本監査役協会というところが監査役(監査等委員)監査の実施要領を公表しているので、基本的にはそれに従った監査及び監督を実施しています。具体的には取締役会等の重要会議への出席、重要書類の閲覧等を行うことで取締役の業務執行の適法性及び妥当性をチェックしています。計画を作ってそれに従って監査を実施し、意見を表明するという流れは会計監査と変わりませんが、会計監査が「適正に表示している」ことを監査意見とするのに対し、監査役監査は「違反事実は認められなかった」ことを監査意見とするという点で、視点が会計監査とは大きく異なっていると感じています。

 

――組織内会計士として公認会計士であることの強みとは何でしょうか

大杉氏:少なくとも監査役としては、数字が分かるというのはアドバンテージだと思っています。 特にベンチャーでは様々なファイナンス知識が必要ですが、そもそもロジックを知っているか、知らないかの違いは大きいように思います。

 

――監査法人経験の強みとは何でしょうか、又は監査法人の経験が今に活かされていると思うことはありますか

大杉氏:監査法人で得た一番大きなものは経験以上に「人」だと思います。監査法人時代お世話になった上司や先輩、後輩には今でも沢山助けてもらっています。

 

――企業内で働く公認会計士にはどのようなものが求められますか(資質やスキルなど)
大杉氏:求められるものはその企業の文化によってかなり変わってくると思います。が、少なくともベンチャーでは誰かに行動してもらうのではなく、自分で行動しないと何も動かないので、一人で情報収集して行動して完結できる、というスキルは最低限必要だと思います。

 

――企業内会計士になってみて感じていること、勉強になったと思うことをおしえてください

大杉氏:実は弊社には会計士が私を含め5名もいるため、資格を持っていることだけで持ち上げられるようなことは全くありません。資格の有無よりどれだけ勉強しているかとどれだけのアウトプットが出せるのか、で判断されるので、マグロのように常に泳いでいないとあっという間に溺れてしまうという恐怖感はあります。 また監査法人時代は研修がプログラム化されていて「情報が向こうから来てくれる」状態でしたが、一般企業では自分で情報が集まってくる仕組みを整えないと、特に最新情報については入手が難しいと思います。

 

    ――その他に何かあればお願いします。

大杉氏:一般企業の役員という働き方を選択し、責任は重くなりましたが比較的自由度の高い働き方を手に入れられました。特に女性はキャリアについて考えなければならないタイミングが何度かあるかと思いますが、「大杉さんみたいな働き方もいいな」と思ってもらえるように頑張っていきたいと思います。

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